青・花

  『生検の結果を聞くまでの10日間は、ひとりだけ違う時間軸に生きて、

ゆっくりゆっくり皆とは違う暗闇に置い

ていかれるような感覚だった』と、麻央さんがブログに書いていらっしゃいます。

  正に私も同じ感覚でした。「悪性度の高い癌です。リンパにも転移しています。

骨にも転移している可能性が あります。」という告知でした。

  実際には、主治医(外科医師)では無い、乳腺外科の医師から

「骨に転移は無いだろう。」と言われました。

 それも、告知から半年の抗がん剤治療後、手術前の説明時にです。

半年間も骨の転移の不安を持ち続けていたのです。

  癌になる前の私は、リンパに転移したら死ぬ。というイメージでいました。

まして、骨にも…なんて…。でした。
 
それに、死をもっと意識させる出来事が重なっていました。

同年代のご近所さんやいとこが癌で亡くなったばかりで…。

 それと、私の死亡保険に入ったばかりでした。子供たちに残すことが目的なので、

主人と私のどちらの名義にしようか?

同じ年なので、女の人が入った方が、少し条件が良いとのことだったので、

私の死亡保険として入ったのです。

それが、死ぬ運命だったから、導かれたんだ…。

みたいに悪い方悪い方へと考えて しまうんですね。

  通常だと、パソコンで検索するんですが、怖くて何も調べることも出来ず、

眠れない毎日が続きました。

 それまでは、ベッドを部屋の端と端に離して寝ていたのですが…。

手を伸ばした時に、触れる場所にいて欲しいことと、何故か、

床に近いところで寝たくて、和室で布団をぴたりとくっつけて寝ております。

  私の「悪性度の高い癌」というのは HerⅡタンパクが多く、

ハーセプチンという薬を使うというタイプです。

 告知から1ヶ月以上が過ぎ、少し落ち着いてきた頃、やっと、

ハーセプチンを検索することが出来ました。

  そこには、「この薬が使われるようになって、予後が劇的に良くなった。」

と書かれていました。

 目の前の霧がスーッと晴れていきました。主治医は、あの時

何故、この一言を付け加えてくれなかったのだろう。

気丈そうに見える人ほど、やさしい言葉が欲しいのです。これからの患者さんには、

この言葉を付け加えてあげて欲しいです。

 これが私の告知で、麻央さんと同じで、「皆とは違う暗闇に、

置いていかれるような。」という思いがあった頃のことです。

 分りすぎるくらい分ります。今、想い起こすと、

あの時の感情が込み上げ、暗闇に少しだけ戻りそうになります。が…。

あの頃の私に声を掛けてあげたいです。「光が差している方を見てご覧!!」